フタ型スーツケースの勧め

2024.11更新)

海外旅行をする日本人の特徴のひとつが、真ん中で開く「両開きタイプのハード・スーツケースを使ってる」ことです。

こういうのですね。大半が両開きです。
最近は中国の人でも(日本人の真似をして)このタイプを選ぶ人が増えています。


おしゃれ系の人に人気のリモワもハードタイプの両開き。

一方のソフトタイプとは、下記のように柔らかい素材のスーツケースで、多くの場合、両開きではなく、長方形の箱にフタがついたフタ型です。
欧米の空港で見かけるのは、こちらのタイプのほうが多いと思います。


重くて高額ではありますが、TUMI やハートマンといった、グローバルビジネスパーソン御用達ブランドのスーツケースも、ほぼすべて「ソフト・フタ型」です。

バリーなど高級ブランド店のスーツケースも、ソフトタイプのフタ型がほどんどでしょ。

つまりお金持ち、エグゼクティブ、さらには一般の人まで、世界では昔からソフトタイプが主流なんです。

★★★

ですが日本では、機内持込みの小さなキャリーを除き、フタ型のスーツケースは少数派です。

私はその少数派のひとりで、過去 10個近く買い替えたスーツケースのうち、両開きのハードタイプは最初に買った一個だけ。

その後はずっとフタ型のソフトタイプを使っています。

なぜかというと・・・

両開きよりフタ型のほうが圧倒的に使いやすいからです。

理由はいくつかあり、

開けた時に必要になる床面積が、両開きタイプの半分!

ホテルの部屋は狭く、ふたりで旅行すれば一部屋にふたつのスーツケースが持ち込まれます。

なのに両開きのハードケースは開くと倍の大きさになり、床を大きく塞いで、ただでさえ狭い部屋をより狭くしてしまう。

出発前に自宅でパッキングする時だって、やたらと場所をとりますよね?

でもフタ型なら下記の写真(私の私物)のように、壁にフタを立てかければいいので、

ちきりん私物。中型。ちょっと入れすぎですが・・・

家でパッキングするときも、また、ホテルで開けて使うときも、必要な床面積は両開きスーツケースの半分です。

両開きタイプって、欧米ホテルの部屋についてるスーツケース台にも置けないよね。だからしかたなく床にスーツケースを置き、しゃがみ込んで荷物を出し入れすることになります。それ、腰に負担かかりません?


しかも、

フタ型のほうが、パッキングがラク!

深さが倍あるから大きなものも入れやすいし、フタ型ってつまりはハコなので、上から放り込み、最後にフタをして終わりです。


ちょっと考えてみてください。

スーツケース以外の収納グッズで、あんな面倒な方法で収納するものは世の中に存在しないでしょ?

両方に入れて閉じて併せるなんて、ものすごい不自然な収納方法なんです。

フタ型なら、閉めるのもめっちゃラク

旅の同行者が、床に広げた両開きのハードのスーツケースの片側(=めっちゃ重い)を、「よっこらしょ!」と持ち上げ、苦労しながら閉めているのを見ると、

「いったいなんで、こんな使いにくいモノが売られてるの?」って思います。

足を踏ん張って片側を持ち上げるのはみっともいい格好ではないし、指を挟むと痛いし、腰の悪い人や高齢者には負担も大きいです。

動かす側にいれたモノがズレたりもするし、一度閉めてから、入れ忘れに気づいた時の大変さには涙がこぼれます。

閉めるのが面倒なため、連泊の際“ついつい面倒くさくて”開けっ放しにする人が増え、盗難の元になったりもします。

外側ポケットが超便利!

ソフトタイプのスーツケースには、外側にファスナーポケットが付いているものが多く、パッキングが終わって鍵を閉めた後でも、

傘、雑誌や(小さくたためるユニクロの)ダウンなど、ちょっとしたものをさっと収納できます。

帰国時の空港で、両開きのスーツケースを床に広げて最後のパッキングをやってる人もいますが、ああいう苦労とも無縁です。

空港行きのバスに乗る前後に、手荷物の中から不要なもの (=旅行最終日の観光に使った傘とかガイドブックなど)をチェックイン前に手間なくスーツケースに移せる。

ほんとーに便利です。

強度も問題ありません

ソフトケースの場合、心配なのは強度だと思いますが、あまり関係ないです。

いくつものスーツケースを使い尽くした私の経験では、スーツケースが壊れるのは、
・車輪
・持ち手(伸縮するところ)
・鍵や閉める部分の細かい部品
が大半です。


長く使っていると、ハードタイプは傷がついたり凹んだりするし、ソフトタイプは表面(の生地)がほつれてきます。ですが、いずれも穴が開くほど壊れることはありません。

てか、その前に車輪や持ち手など、別の部分が壊れて使えなくなるんです。だから頑丈さのために「ハードでなければ」と考える必要はありません。

雨の日でも、ソフトタイプだって中身が濡れたりはしません(スーツケース自体は濡れて水を含むことがあります)。

あと、中に入れたものの壊れやすさは、言うまでもなく「その壊れやすいモノをどう梱包したか」が重要なのであって、一番外側がハードでもソフトでも関係ないです。

盗難の可能性も変わりません

「盗難が怖いからハードケース」という人も多いのですが、これもナンセンスです。

最近はハードタイプもソフトタイプも、同じ鍵がついてるし、

そもそもスーツケースを開けて中のモノを盗むのは、そのへんの空き巣じゃなく、空港の職員、および彼らとグルの泥棒です。

今、最近のスーツケースの鍵はほとんどは、「万能合い鍵」が存在する TSA 対応ロックでしょ。

もしかしてみなさん、「アメリカの空港職員以外は、そんなものは持っていない」などと信じてます? 

んなもん、すべての空港の泥棒が所有してます。だから、狙われたらハードだろうとソフトだろうと簡単に開けられ、盗られます。

★★★

このように、機能性でいえば「フタ型」スーツケースの圧勝なのですが、私にはもうひとつ、必須と考えている機能があります。

それは・・・

4 車輪タイプで、そのうち 2つにストッパーが付いてること


スーツケースには、車輪が 2つのものと、4つのものがあります。

4輪のほうが軽く動かせていいのですが、手を離すと勝手に動いてしまうため、電車や空港バスの中では常に押さえていないと危ない。カーブや急ブレーキのとき、滑りだして子供や高齢者にぶつかったりすると大きな事故につながりかねません。

でも揺れる電車の中で重いスーツケースが動かないよう手で押さえておくのは、けっこうな重労働。

ところがキャスターストッパーがついてると、電車が揺れても動かない。手を離しても安心です。

最近のスーツケースは、ソフトタイプもハードタイプも大半が 4輪ですが、いずれも車輪ストッパーがついてないものもまだ多い。
ここはしっかりチェックしたいポイントです。

★★★

さて、こんな考えの私の、スーツケース遍歴を振り返っておきましょう。

20代の時、最初に買ったのはハードタイプでした。

その使いにくさに疑問をもち、次からはニューヨークなど鞄屋の多い街で、ソフトタイプのフタ型を選んで購入していました。

外資系企業に勤めて出張が多かったときは、ハートマンなど、ビジネスパーソン御用達ブランドの高級品(ソフト・フタ型)を使っていましたが、こういったハイブランド品は(丈夫だけど)男性向けですごく重い。。。ので、その後は、下記のような軽くてかわいいソフト・フタ型を買って使っていました。



(前に使っていたスーツケース。左がイタリアの BRICS 、右はキプリング。いずれも 2輪タイプ)


いずれも使いやすかったのですが、どちらも 2輪でストッパー無し。取り回しのラクな4輪キャスターでストッパー付が欲しくなり、ネットで下記を購入。
これは 5年超にわたり、2回、買い換えて使いました。めっちゃ使いやすいです。


敢えてこの商品の難点を挙げるとすれば、見かけが地味でイマイチかっこよくないこと。
空港で間違ってピックされるのを防ぐため、カラフルなスーツケースベルトやタグを付けておくといいんじゃないかな。

あと、壁にフタを立てかけた時、中仕切りが落ちてくるのが難点。でもこれは、もう一つの中仕切りにクリップで留めれば防止できます。

ALIFE(アリフ) HAPPY FLIGHT スクエアラゲージタグ オレンジ
イデアインターナショナル (2011-08-01)
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ちなみにこのエントリを読んで、糸井重里さんもこのスーツケーを買ってくださったらしく、とても使いやすいとおっしゃっていました。

お役に立ててよかったですー!


サイズについて

最近はLCCも出てきて、無料で預けられるサイズや、機内持込みできるサイズが各社バラバラになってきました。

このため、特にLCCを多用する方は、そのルールに合うサイズの商品を買うのが重要です。

でも、時には「追加料金を払ってでも、大きなサイズを使ったほうがいいとき」もあります。

上記で紹介したスーツケースには、下記の4つのサイズがあるのですが、これ、かなりデカいサイズがあるんですよね。
 ↓

1)HPL3120-65 ←通常の“大”サイズ 3辺の合計が 158cm以下なので一般の(LCC以外の)飛行機会社では追加料金なしで預けられます。


2) HPL3120-75 ←ここからは預けるのに追加料金が発生します。それでも出張で資料が多い人、マリングッズなどスポーツ用品を持参する人、子供連れなど荷物の多い人には便利かも。


3) HPL3120-80 ←驚くほどデカイ。さすがの私も、どんな人が買ってるのかよくわからない・・・


詳細サイズは、こちらのページの真ん中あたりに表として、縦・横・奥行きが明記してあります


3辺の合計が158センチを超え、無料での機内預けの範囲を超えていても巨大なスーツケースを使ったほうがいい場合とは?

たとえばこれだけ大きいと、親子ハワイ旅行でも、スーツケースがひとつで済むんじゃないかな。子連れ旅行の場合、親のスーツケースがひとつになり、ひとり大人の手が空くとすごいラクじゃないですか? サイズ超過料金を数千円払っても価値があるんじゃないかと。


あと、仕事の書類や商品サンプル、撮影機材やマリングッズなどスポーツ用品をもち歩く人や、

留学や海外駐在で、一時帰国時に山ほど「現地では手に入らないもの」を運ぶという人などは(追加料金を払ってでも)巨大なほうが便利かもしれません。

★★★

雑談ですが、飛行機会社は、荷物の重量には非常に厳密です。

重量は燃料費にも影響を与えるし、バランスに影響すると安全規定にも抵触するからです。

なので途上国の小さな空港でも重量は必ずチェックされるし、一定以上の重量オーバーの場合は「中身を出して(持込み荷物にして)軽くしろ」と言われます。

なので、かなり重い荷物を運ぶ人は、こういうのを常備しておくと便利かもしれません。


一方、サイズについては(安全性とは関係なく)「お金=追加料金の問題」です。

というのも、釣り道具やゴルフバッグ、最近では電動車椅子やベビーカーなど、スーツケース以外でサイズが大きな荷物を預ける人はたくさんいるからです。

つまり、荷物のサイズはお金(追加料金)の問題であって、(重量のような)飛行場の安全性に影響を与える問題ではないのです。

★★★

さて、私のもっているスーツケースの紹介に戻りましょう。

上記でお勧めした商品を 5年以上、愛用してたのですが、車輪のゴムやファスナーの持ち手が壊れてきたので、買い換えることにしました。

そして探してみると、(まだ多くはありませんが)フタ型でストッパー付のものが増えてきたことに気がつきました。

すばらしい!

そりゃそーだよね。あきらかにフタ型のほうが使いやすいもん!

そこでいくつか検討し、今度は下記を買ってみました。


ペコペコの薄い素材ですが、一応ハードケースの部類に入るのでしょう。

チャック開閉式で、通常のスーツケースのように真ん中で両開きにして開けることもできますが、フロントオープンといって、いちばん上の薄いフタ部分のみでも開閉が可能。

ここだけを開けると、フタ型スーツケースとして使うことができます。キャスターにストッパーも付いてます。

ただし外部ポケットはないので、その点は前に使ってたモノのほうがいいかも。

あと、持ち手のラバー部分の素材がいまいちで長く使ってると劣化してきます。

ただし、こちらの商品ならシルバーや赤もあり、わりとオシャレ。小さいサイズもあるようです。

★★★

私はもうひとつ、ちょっと小さいサイズで下記も持ってます。

黒の本体に赤いラインがとてもオシャレ。Hideo Wakamatsuブランドですね。

フタ型で使いやすく、軽量で車輪の動きもスムーズ、ポケットもついてますが、ストッパーは無し。

小さめなので「ヨーロッパ 12日間の旅」とかだと、ちょっと容量不足。4~5日くらいのプチ旅行に使ってます。


以上、
ハードタイプのスーツケースは本当に素敵な商品も多いので、欲しくなる気持ちはよくわかります。

でも、旅行回数の多い人、そして、「やっぱり使い勝手が大事だよね」と思われる方は、ソフトタイプもぜひあわせてご検討ください。

ではみなさま、よいご旅行を!


 そんじゃーね


<2024年11月追記>
なんと、超メジャーなスーツケースメーカー、サムソナイトからも、ふた型として使えるスーツケースがでました!!
ようやく日本でもふた型のよさが理解され始めたのかもしれません。

キャスターストップもついてます。大中の2サイズで、黒とシルバーの2色展開。
ただし外部ポケットはなし。そしてお値段は 9万円以上。マジ? 

こちらからは以上です・・・


<リンクまとめ>

下記が数年前まで使ってた「ストッパー付き、外部ポケット付き、フタ型ソフトタイプ」スーツケースの通常サイズ。

↑アマゾン

↓楽天の同サイズはこちら


その他、アマゾンでいろいろ探してみたい方は下記からどうぞ。

写真で見ると大きそうでも、中には小さめの(機内持ち込み用の)小型キャリーも含まれているので、買う前にしっかりサイズを確認しましょう。

→ アマゾンのソフト・スーツケースの検索結果



http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+shop/